「恐らく欠席かと。国王陛下はここ数年、公の場へのお出ましがありませんので」

それでよく結婚しようなんて考えたものだ。

やっぱりこの結婚は、国王ではない誰かが推し進めたものなんだろうな。

でも、誰が? アリーセが嫁いで得をするのは、ベルヴァルト公爵家だけど、公爵は王家からの話だと言っていたし。

「国王陛下がの具合が悪いって言うのは本当だと思う?」

フランツ夫人に声を潜めて聞いてみる。

人払いしてある部屋だと言うのに、彼女は周囲を気にしたように小声で答えた。

「本当かもしれませんが、他にも何かがあると思います」

私は小さく頷いた。

やはり誰が考えてもおかしいんだ。

怪しいエルマ、姿を見せない国王、そしてインベルの不穏な動き。

どれもばらばらな出来事だけれど、謎ばかりなのは同じ。

嫁いでからもう三月が経つ。そろそろはっきりさせたいところだ。

今度の夜会で何か動きがあればいいけど。



王家主催の夜会当日。

私は朝から少し緊張していた。

小説ではこの夜会について触れられていないからだ。

つまり何が起きるのか予想不能。

メラニーとレオナに着付けてもらった結構派手な赤のドレスを身に纏い、広間へ向かう。
今夜もフランツ夫人が付き添ってくれているので、心強い。

広間は優雅な音楽が流れ、大勢の貴族たちが近くの人と談笑している。