予想もしていなかった質問なのだろう。ランセルの肩が揺れる。

「なぜあなたがそのようなことを?」

「インべルで不穏な動きがあると城下町で噂になっているそうです。インべルと国境を接するバルテル辺境伯家は私の母の生家ですから気になるのです」

「……そうだったな。ではあなたとローヴァインは親族だったか。まるで初めて会ったように振舞っていたが」

ランセルが言うのは、夜会の時の話だろう。

たしかにあの時の私達は他人行儀だった。だって本当に初対面だったからね。

私なんて存在すら知らなかったし。

「実際彼に会ったのはあの時が初めてです。それまで私は屋敷を出たことがありませんでしたから」

「なるほど。ではあの日がきっかけで交流が始まったという訳だ。ローヴァインはどうしている? 最近姿を見ないが」

「存じません」

ランセルは私とロウが面会していることを知っているのかな?。

「そうか。それであなたが知りたいのはバルテルに危険が無いかということでいいか?」

「はい。それからもし噂が本当でインべルが攻めて来るのなら、王家としてはどう対応するつもりなのか知りたいのです」

「その件は国王陛下からローヴァインに話してある。あなたが口出しする必要はない」