城に出入りする機会の少ないエルマの可能性は低そうだし。

考え込んでいると、慌ただしい足音が聞こえて来た。

間を置かずに、メラニーが飛び込んで来る。彼女らしくない慌てた様子に私は眉をひそめた。

「どうしたの?」

「はい、王太子殿下がいらっしゃるそうです。直ぐにお支度を」

「え、今から?」

どうしてランセルが私の部屋に?

彼とは王妃戴冠の儀式の際に顔を合わせたきりだ。

一体何の用で来るのだろう。嫌な予感……。


ランセルは、それ程時間を置かずにやって来た。

「ランセル殿下、お久しぶりで……」

「どういうことだ?」

彼は出迎えた私にキツイ目で向けて言う。挨拶は無し。

なんでこんなに感じが悪いんだろう。夜会の時もそうだったけど、いきなり喧嘩腰だし。

不愉快になったけど、我慢して冷静に返事をする。

「おっしゃる意味が全く分かりません。落ち着いて説明頂けませんか?」

ランセルは王太子でとても身分が高い人だけれど、私だって名ばかりとはいえ私は王妃なのだ。
必要なことはしっかり言ってやる。

彼はむっとしたように顔をしかめながらも、ソファーを下ろす。

「あなたは定期的に有力貴族の夫人方を集めているそうだな」

「お茶会なら開いてますけど」

ランセルの不機嫌の原因はお茶会なの?

でも、なぜそんなことで怒るのだろう。

「私の婚約者について話題にしたと聞いた」

「はい、たしかに」