「……もしかして、王家へ訴えるのを諦めたの?」

彼は見切りを付けたのだろうか。

急に不安が大きくなった。ロウが王都を離れバルテルに戻る気なんじゃいか。そんな気がするから。

「そうだな。いつまでもここに残って時間を無駄には出来ない」

胸がずきりと痛んだ。心細さに苛まれる。

「そんな不安そうな顔するなよ。リセとの約束は忘れてないから」

「でもそれは無理でしょう?」

王都を離れたら連絡を取り合うのも難しくなるだろうし。それにロウの方に私と協力するメリットがなくなる。

「一度バルテルに戻り伯父上と相談しないといけない。けど近い内に戻って来る。それにガーランドとフランツ夫人は今まで通りだ」

「……いいの?」

「ああ。リセに言われていろいろ調べたら気になることが出て来たからな。放っておけないだろ」

ロウの言う“気になること”はアリーセに関する悪評だろうか。

あまりに酷くて、心配してくれているのかな?

私としては助かる申し出だけど、ロウの方はそれで大丈夫なのかな。

バルテルは大変な時期だろうに。

「あ、信じてないな?」

「そうじゃないけど、悪いと思って」

「気にするな。俺たちは従兄妹だし、伯父上もリセのことを気にしているだろうから」

伯父上って現辺境伯のことよね。アリーセの母親の兄にあたる。

「ありがとうね。私もいつか伯父様に会ってみたいな」

「そうだな。早く落ち着くといいな」