大きな変化は望めなくても、冤罪、追放の末殺害されるという最悪の未来だけは、なんとか回避しなくては。痛いのも怖いのも嫌だもの。

侍女の淹れてくれたお茶を飲みながら、現状分かっていることを整理する。


私の意識が入り込んだアリーセ・ベルヴァルトは、カレンベルク王国の、ベルヴァルト公爵家の長女として生を受けた。

母親は有力貴族バルテル辺境伯家の令嬢だけれど、アリーセが幼い頃に病気で亡くなっている。

喪が明けてすぐに父公爵が外で囲っていたリッツ男爵家出身のエルマを後妻に。同時に彼女との間に生まれた、アリーセよりも一つ年下の娘を屋敷に向かえた。

その際、アリーセは公爵家敷地内に建つ離れに追いやられ、以来誰も訪れない離れでひっそりと暮らしている。

公爵令嬢と言うと華やかなイメージだけれど、アリーセは孤独で不遇な日々を送っていたのだ。

侍女の話から、現在のアリーセの状況もだいたい把握した。

今アリーセは十七歳。数日後の王家主催の夜会に出席する為、準備中だ。

それなのに、庭を散歩している途中に急に意識を失い、三日も目覚めなかったらしく公爵家では大騒ぎになっていたそう。

家族はアリーセに対して愛情や優しさを持っていないはずだけれど。おそらく夜会に出られないのはまずいから、心配していたのだろう。

それ程今度の夜会は重要なイベントなのだ。

カレンベルク王国の貴族令嬢は通常十六歳で社交界デビューをする。