「でもどうして隠す必要が?」

しかも王家に嫁ぐ私にまで。

「カレンベルク王国にバルテル領が吸収されたとき、問題が起きたからだと言われている。王家としては振り返りたくない歴史なのだろう」

「つまり王家が何か良くない行いをしたのね?」

自分たちの醜聞を消したってわけだ。

バルテルが王国内で特殊な立ち位置なのは、場所柄と国境警備の役割からだと思っていた。

でも、実際はそうではなく最初は別の国だったからなんだ。

「そういった事情でインベルはバルテルを狙っている。本来の自国の領土を取り戻そうとしているんだ。王家はそれを分かっているのに対応しようとしない。それは容認しているからかもしれないな」

ロウは後半はいつもの朗らかさを消した重い表情で呟いた。

私も嫌な予感でいっぱいだ。

だって今の流れだとカレンベルク王国とインベルは繋がっている可能性が出て来る。

もしそうだとしたら、バルテルは前後を敵に挟まれた格好になってしまう。

「国王たちは何を考えているのかな? 元は別の国と言っても、もうずっと昔に受け入れて同じ国民になったのに。今更見放すような真似どうしてするの? 国土が減ったら王家だって困ると思うけど」

「理由は俺にも分からない。でもそういう可能性もあると考えて対策を取らないといけない時期にきているかもしれない」

ロウが静かに言う。その様子は凛としていて何かを決意したようにも見える。