呆れて黙っていたのだけれど、ユリアーネは勘違いしたらしく顔を赤くしている。

「昔からそうだわ。バルテル辺境伯家出身の母親の身分を誇って、私たちを見下して……」

いや、アリーセはそんな風に考えていなかったはずだけど。いつだって家族と仲良くしたくて報われない努力をしていたんだから。

「でも私のリッツ男爵家は元々他国の貴族だったんだから!

「え? 商人だったのではないの?」

思いがけない発言に、つい声が高くなった。

「違うわ! インベル王国の貴族だったのだから」

私は小さく息を呑んだ。調べても分からなかったリッツ男爵家の過去を、こんなにあっさり知ることになるなんて。

「……それは確かなの?」

「本当よ。叔父様が屋敷に来たとき、お母様とそう話しているのを聞いたのだから間違いないわ」

ユリアーネは得意げだ。

「インベルの貴族が、なぜカレンベルク王国で商人になっているの?」

「それは知らないけど何か事情が有ったのでしょう? そんなことよりも私が貴族の血筋だと分かって貰えたのかしら」

「それ、公爵……お父様はご存知なの?」

「話したことはないわ。でも当然知っているでしょう? 叔父様はお父様とも仲が良いのだもの。離れで暮らしていたお姉様はご存知無いでしょうが、ときどき食事をご一緒しましたの」

ユリアーネは勝ち誇った様子で去って行った。