最近はまっていた小説で、異世界に転生したり、ゲームの中に入り込む物語を幾つか読んだ。

結構面白くてはまりもした。だからと言ってまさか自分の身に起きるとは思わないもの。

一体どうして? 小説で出て来たように、体を無くした魂が移動したとか?

と言うことは、私は階段から落ちた時、打ち所が悪くて死んでしまったのかな?

それでどういう訳か本の世界に入り込んでしまった。

今こうして動き、考えているから自分が死んだなんて思えないけど。

本来のアリーセの心がどうなったのかも、分からない。

でも、何も分からなくても、私はアリーセとして存在している。

このままこのカレンベルク王国物語の世界で生きて行くしかないのかな? 

それはかなり前途多難だけれど。

アリーセは、将来は酷い目に遭うのが確定している身。

小説ではこういう時、物語の先を知っている有利さと、元の世界の知識や特技で未来を変えて行くのだけれど、普通のOLだった私にはこれといった特技がない。

しかも、鏡に映る姿は既に成人。

アリーセの人生を大きく変える、“やり直しの為の時間”は殆ど無いように思える。

これ完全に詰んでいない?


ショックのあまり三日ほど寝込んだ私は、今日ようやくベッドから抜け出した。

ただでさえ時間がないのに、いつまでも落ち込んでいては駄目だと気付いたのだ。