「いや、ランセル王太子の答えもはっきりしない。王家は動かないつもりかもしれない」

「理由は聞いた?」

「納得できない返事だった。でも王族にしつこく追及は出来ないからな」

国王は分からないけど、あのランセルが何も考えずにぼーっとしているとは思えない。

動かないとしたら、理由があるんじゃないかな。何か企んでいそうな気もする。

「それでこれからはどうする気?」

国王も王太子も駄目では、もう動きようが無いんじゃない?

ロウはここで少し身を乗り出した。

「リセから国王にバルテルの件を頼んで欲しい」

「は?」

思いがけない発言に私は高い声を上げた。

「な、なんで私? 無理でしょう?」

政治のことを何も分かっていない私が口出し出来る内容じゃない。

それ以前に、国王には会えていないんだもの。ランセルは近寄りたくもないし。向こうも私を毛嫌いしていて近づけない、無理。

でもロウの押しは強かった。

「難しいのは分かってる。でもあれ以来国王への謁見は断られているし、他に方法がないんだ。俺に会うようにって口添えしてくれるだけでいいから」

「そ、そんなこと言われても」

ロウが本当に困ってると言うのは分かった。
緊急事態でなければ私にこんなことを頼んだりしないだろうし、バルテルは話に聞くより良くない状況なんだろう。

この世界に来て初めて出来た知り合いで、結構気も合う彼の頼み事を聞いてあげたい気持ちはある。

でも、現実的に不可能だよね……。