「ここでの暮らしはどうだ?」

「まあいろいろあるけど、今のところ不自由はしていないよ」

「そうか」

「ねえ。今日ここに来たのって、私の顔を見に来ただけじゃないよね?」

さっきから気になっていたことだ。

ガーランドさんをわざわざ連れて来ているところと言い、何か用件があるんじゃないのかな?

「ああ実はリセに頼みが有るんだ」

ロウが私をあてにするなんて意外だ。

「頼みってなに?」

「今から言うことは他言無用にして欲しい。いいか?」

「え? う、うん。もちろん」

一体何を言われるのだろう。

分からないけど、ロウの醸し出す雰囲気がいつもと違い深刻そうなので、気を引き締めて言葉を待つ。

「俺たち辺境伯家の人間はあまり王都を訪れない。国境を守る役割があるからな。それなのに今長期滞在しているのは、王家に直談判をするためだったんだ」

知らなかった。ロウが王都に居るのはレアだったんだ。
だから公爵家と王宮が舞台のアリーセの物語には出て来なかったのかな?

「ロウは何を訴えに来ているの?」

「以前町でインベル国の噂を聞いただろう?」

突然変わった話題に戸惑いながらも、頷く。

「うん、戦を始めそうな気配だって町の人たちが不安がっていたよね」

しばらく戦争が起きないと知っている私も、なぜか嫌な感じがしたんだった。

「そのインベルがどうしたの?」

「あれは噂じゃない」

「え?」