彼女はとても良い人だけれど、それでも私を名ばかりの捨て置かれた王妃だと考えていたはず。

実際、嫁いでからの十日間、私は王妃の身分をひけらかしたりしなかった。

だから急に自己主張を始めたことに驚き、どう扱って良いか分からないのだろう。

恐らく他の貴族達も皆そうだ。

婚礼の儀式も無し。お祝いの夜会も開いていない。更に元々公爵から疎まれているという評判がある。

メラニーの対応は当然とも言える。

だけどこれからは認識を改めて貰わなくてはね。

まだ判断しかねている様子のメラニーに私は続けて命じた。

「国王陛下への目通りとは別件になるのだけれど、近い内にお茶会を開きたいと思っているの。その旨も宰相に伝えて」

「お茶会でございますか?」

メラニーが戸惑いを見せる。

「ええ。王妃がお茶会を開くなんてよくあることでしょう?」

「……はい。では宰相様に許可を頂けるようお願いを……」

「許可ではないわ」

私は彼女の発言をあえて遮った。

「宰相に伝えるのは“お茶会を開く”という事実の報告よ。誰かの許可はいりません。そうでしょう?」

少し首を傾げて見せる。メラニーの顔色が悪くなったけれど構わず続ける。

「宰相が反対すると言うなら直接私のところに言いに来るように伝えて」

「は、はい」

「では直ぐにお願いね」

メラニーは、私の言葉通り急ぎ部屋を出て行く。