「アリーセ様が王宮に入られた翌日です……陛下の訪れが無かったようで心配していたところ、宰相様から呼ばれまして」

「そう……」

カレンベルク王国の宰相には、伯爵以下の貴族が就くという決まりがある。

公爵家やバルテル辺境伯家のような大貴族に権力が集中し過ぎない為で、現宰相は歴史はあるけど財力はそこそこの伯爵家の当主。物語の中で存在感が薄い人だった。

アリーセが断罪された時も、発言するのはランセルばかりで宰相がどこに居たのか記載が無かった。

輿入れの日にちらりと見かけた姿も地味で年齢不詳だったし。

そんな人が、私と国王が会うのを邪魔するとは思えないけどな……もしかして宰相の名前ではあるものの実際は国王の意向なの?

分からない。でもいずれにしても駄目と言われたから諦める訳にはいかない。

「宰相の言い分は分かりました。でも納得は出来ません。国王陛下に取り次いで頂くように伝えて来て」

「ですが、それはお断りするようにと命令されております」

私と宰相の間で、板挟みになったメラニーは困りきっている。彼女が悪いのではないと分かっているけれど、あえて厳しい態度で告げた。

「自分の夫に会えないなんておかしいでしょう? そもそも、なぜ王妃の私が宰相の指示に従わなくてはならないの?」

メラニーは、はっとした様子を見せた。

私が、宰相より王妃である自分の方が上だと主張したからだ。