返事をすると嬉しそうに頬を染めるところは、同性の私から見ても可愛い。 

「続いて髪を結ってよろしいですか?」

ヘアアレンジとメイクはレオナの担当のようだ。

「ええ、お願いね」

レオナは器用に私の髪を複雑に結い上げ、ダイヤモンドの髪飾りで飾ってくれた。

薄く施してある化粧と相まって、美人度が上がっている。

鏡の中には公爵家の離れでひっそりと暮らしていた娘の姿はなく、自信に溢れた若い王妃がいた。

外見を変えただけで、こんなに変わるなんて驚いた。

ふたりの美容の技はかなりのものみたい。

でも……小説の中でこんな風にアリーセが着飾っていたシーン有ったっけ?

侍女にも下に見られて仕事放棄されていたような描写が目立ってたけど。

考え込んでいると、メラニーの明るい声がした。

「王妃様、朝食の支度を致しますね。居間でよろしいでしょうか? テラスに用意することも可能ですが」

「テラスで食べたい。お願い出来る?」

理由は分からないけど、親切な侍女で良かった。私は笑顔で返事をした。

王妃生活がスタートし十日が過ぎた。
半ば予想していたけど、未だ国王と会っていない。

寝室にも来ないし、食事の誘いもない。新婚夫婦どころか仮面夫婦よりも酷い状況。

完全に放置されていて、物語同様捨て置かれた王妃への道を着々と歩んでいる。

当然、このままだとまずいので、そろそろ行動に出ることにした。