期待して返事を待っていると、公爵はようやく覚悟を決めたようだった。

「アリーセの言うことはもっともだ」

やった! 心の中でガッツポーズを作る。

「今すぐ教師を雇うから必死に勉強しなさい。王宮入りする迄になんとしてもなんとしても常識を身に付けるように。寝食よりも優先して努力しなさい」

「え……」

嘘でしょう?

「な、なんでそこまで私を? この家には王妃に相応しいユリアーネがいるのに」

年寄りの国王相手だからユリアーネが嫌がっているのだろうけど、我儘を許している場合じゃない。ここは自慢の娘の出番でしょう?

「王家がアリーセをご所望なのだ。こちらの都合で花嫁の交換などありえない」

王家からの命令? 王妃の件は公爵の策略ではなかったの?

眉を顰めながらも小説を思い出す。そう言えば、王妃になった経緯ははっきりと書いていなかったんだ。

政略とあったから勝手に公爵が決めたのだと思っていたけど……違っていたのなら話は変わる。
たしかに王家からの申し出を断るのは困難そうだ。

だけど、私としては納得出来ない。

ランセルのいる王宮になんて絶対行きたくない。あの腹黒王太子を前に破滅ルートを回避するのは、かなり大変そうだもの。

それに寝食よりも勉強を優先しろって、ブラック企業みたい。

本当に何もかもが有り得ないんだけど。