かと言ってどうやって……そうだ!

「お父様、お忘れですか? 私は王妃教育どころか貴族令嬢としての礼儀作法もまともに学んでいません。こんな状況で王宮に入ればベルヴァルト公爵家の恥になります」

家の恥と言ったからか、公爵の頬がぴくりと動いた。

「礼儀作法を学んでいないってことはないだろう?」

「あります。エルマ様が私についていた教師を首にしましたから。私、何も知りません」

ついでにエルマの非道を暴露しておく。

公爵の顔色が更に変化した。あと一押し。

「学もなく作法も知らない私が王宮で粗相をしたら、そんな娘を王妃に推したお父様の責任問題になりかねません」

声に力を込めて訴える。

結構言葉がスラスラ出てくるのは、営業職で鍛えられたおかげかも。よしここで最後の仕上げだ。

「私は我がベルヴァルト公爵家の為にも王妃の位を辞退したいと思います。また辞退した以上は普通の結婚を望めるとも思っていません。公爵家を出てどこか地方でひっそりと暮らしていきたいと思います」

よし、家を出る流れまで作り出した。

普通の貴族令嬢にとって屋敷を追い出されるのは死ねと言っているようなもの。大きな罰だ。

家の為に自ら罰を受けると言っているのだから、公爵だって納得するでしょう?

問題が起きて一番困るのは当主である彼なのだし。

案の定、公爵は悩みだした。眉間にシワを寄せうーんと唸っている。

恐らく王妃の話はなくなるだろう。