彼は相変わらずいかめしい様相だけれど、口調は最初から丁寧だった。
それは打ち解けた今でも変わらない。ロウに聞いたらそういう性格なのだと言っていた。

「おまかせで願いします」

ガーランドさんの出してくれるバルテルの郷土料理を私もすっかり気にいり毎回お任せで頼んでいる。
作り方を教えてくれたので自分でも作ってみたいけれど、侍女に不審がられそうなので今は出来ない。

いつかベルヴァルト公爵家を出て自立する日の楽しみにとっておこう。

「お、早いな」

ガーランドさんが出来立ての料理を運んできた。

今日も美味しい料理を彼らと一緒に楽しんだ。



脱出計画は順調に進んでいた。

公爵家を出た後の住まいや仕事についても考えが纏まって来ている。

本当はバルテルに行きたいけど、簡単ではなさそうなので、まずは都から馬車の出ている町に移ろうと決めた。

仕事は洋裁店で針子をするか、食堂の調理の方で雇って貰えたらいいなと思ってる。どちらも人前に出ずに済む上に、私でも出来そうだから選んだ。

当分はそうやって生活をして、いずれ一生出来て好きなれる仕事を見つけて転職出来たらいいな。

あと問題は初期の資金。アリーセには財産があまりない。現金の手持ちは少なく今後も貰える見込みもないから、なけなしの装飾品を売ってしのぐしかなさそうだ。

そんな風に私なりに計画を進めていたある日のこと。

珍しく公爵から呼び出しがかった。