優しい笑顔のローヴァインは、今のところ良い人に思える。

ランセルのような傲慢さがないし、気遣いがある。

だけど、一応油断はしないように気をつけよう。

私は彼のバルテル辺境伯家に関しての情報を持っていないし、カレンベルク王国の貴族達ってかなりドロドロしていて裏の顔がある場合が多いみたいだから。

一見善人に見えても、実は悪人かもしれないからね。



広間では華麗な音楽が流れ、白いドレスを着た若い令嬢達が貴公子に手を取られダンスを踊っていた。

令嬢の親たちは、微笑ましそうにそれを見守ったり、知人と談笑していたりしていたけれど、私たちに気付くと観察するような視線を送ってきた。

ローヴァインは人目を気にしない性格なのか、怯まず堂々と広間を付きって行く。

彼は壁際のソファーに私を案内すると、使用人から飲み物を受け取り手渡してくれた。

さすが貴族、エスコートに慣れているなと感心する。喉が渇いていたので有難い。

「ありがとうございます」 

「どういたしまして。少し休憩したら踊って頂けますか?」

「え、私と?」

動揺する私にローヴァインは機嫌良さそうに頷く。

「はい。アリーセ嬢、どうか私の手を取って頂けませんか?」

貴公子らしい華やかな魅力を発揮したローヴァインが誘いの手を差し出す。
あまりのイケメンぶりについ手を取りそうになった私は、直前で正気に返りぶんぶんと首を振った。

「ごめんなさい、無理です」

私、ダンスなんて出来ないもの。