ローヴァインと名乗った彼は礼儀正しく頭を下げる。

凛としたその態度は、貴族と言うより騎士のようにも思えた。

それにしても、この人はアリーセの母方の親戚だったんだ。

小説ではバルテル辺境伯家の人々については、ほとんど触れられていなかったから、存在をすっかり忘れていた。

「あなたはバルテル辺境伯のご令息なのですか?」

とりあえず事情聴取してみる。

「ええ。養子ですが」

「養子?」

「私は現辺境伯の弟の子です。辺境伯に子がいない為、五年前に後継に選ばれて養子になりました」

なるほど。私はローヴァインの言葉に頷きなら頭の中を整理した。

現辺境伯はアリーセの母親の兄。ローヴァインのお父さんも辺境伯の弟だそうだから、アリーセの母は三兄妹だったってことね。

うんうんと頷く私に、ローヴァインが怪訝な顔をする。

「ご存知ありませんでしたか?」

「え? ええと……そういうのに疎くてごめんなさい。もう少し勉強しておきますね」

親戚について知らないなんて疎いというレベルの話じゃないけど。

強引に誤魔化す私を彼はじっと見ている。

きっと胡散臭いと思ってるんだろうな。

だけどローヴァインは空気を読める男のようで、話題を変えて来た。

「アリーセ嬢には以前からお目にかかりたいと思っていまいた。従兄妹同志です。今後もよろしくお願いいたします」

「こちらこそ。よろしくお願いします」