私はびくりと体を震わせ、その場に佇んだ。

このもの凄く偉そうな口調は相当立場が高い証。

ランセルの確立が一気に上がった。

最悪と思いながらも振り返り彼が近づいて来るのを、頭を下げて待つしかない。

足音が大きくなる。それが止まったのと同時に、再び厳しい声が降りてきた。


「君は夜会の招待客のようだな。ここで何をしている?」

デビュタントの印の白いドレスで招待客だと分かったのだろう。身元と、何をしているのかを確認される。

尋問みたい。嫌な気持ちになりながらも顔を上げて質問に答える。

「アリーセ・ベルヴァルトと申します……休憩出来る所を探していました」

この後ランセルは、何を言うのだろう。もはや物語と全然違う展開で先が読めない。

「なるほど。だがこの先は王族と許可されたもの以外は立ち入り禁止だ。君が本当に休憩室を探していたのだとしたら道を間違えたのだろうが、はたして真実はどうなのかな?」

彼の口調には明らかに棘がある。なぜか出会った途端に喧嘩腰だし。

この頃のランセルはまだアリーセに優しかったはずなのに、どういうことなの?

すぐに返事をしないせいか、ランセルの顔がますます強張っていく。

そのとき、第三者の声が割り込んで来た。

「殿下。彼女はデビュタントで王宮の夜会になれていないようだ。本当に道を間違えたのでしょう」

発言したのは、ランセルの一歩後ろに控える青年。