公爵は混乱のあまり、訳が分からなくなっているのだろう。

私の発言を肯定してしまっている。

「あなた!」

エルマの激怒した声が響いたけれど、公爵はひたすら震え謝り続けている。

この人は本当の悪人じゃないのだろうと感じた。流されて悪い方に進んだだけ。

だからといってアリーセにしたことを許す訳にはいかないけど。

「公爵も認めていますし、この件はランセル王太子殿下に正式に報告します。他にもベルヴァルト公爵家とリッツ男爵家には後ろめたいことが有りそうだし、しっかり調べて貰うつもりです」

言い終えるとリッツ男爵が一歩私に近付いてきた。

「バルテルの小娘が……」

彼の体から怒りが立ち上っているようだった。

そのただならぬ様子に本能的な恐怖を感じたその時、ロウが玉座の前に出てリッツ男爵に告げた。

「控えろリッツ男爵。それ以上王妃殿下に近付くのは許さない」

ロウの言葉には力がある。怒りにからわれたリッツ男爵もそれ以上は動けないようだった。

「今後については、後ほど沙汰を下す。申し開きをしたいのなら逆らわないことだ……衛兵、入室せよ!」

ロウに呼びかけに応え、待機していた数人の兵士が入って来る。

「何をするの! 私を誰だと思っているの?」

騒ぐエルマとすっかり腑抜けた公爵。それから憎悪に溢れたリッツ男爵は引きたてられ、謁見の間から連れされた。