王妃と言っても私は政治には関われない。

表舞台ではランセルとロウが活躍して、徐々に混乱を収めていた。

その間私はマリアさんを貴婦人たちに紹介して、彼女の立場を固めるように動いていた。

エルマとユリアーネが何か言って来るかもしれないけど、私はランセルの妻はマリアさん以外にないと思っている。

名前ばかりの王妃だけど、持てる権力を総動員して、マリアさんをフォローした。

フランツ夫人とメラニーも私の意向を汲んで協力してくれている。

そうして過ごしている内に一月が経ち、ランセルとロウが私へ事情説明にやって来た。


場所は応接間ではなく私の私室の居間。

人払いをするとすぐにランセルが切り出した。

「報告が遅くなって悪かったな。ローヴァインは自分が説明すると言っていたんだが、私から伝えるのが筋かと思い、このような時期になった」

ロウの説明で、早く教えてくれた方が良かったんだけど。

なんて正直に言えるはずもなく、私は黙って続きを促す。

「時間も無いので結果から言うが、宰相は自害した」

「えっ?」

お茶のカップを手にしていたら落としていたところだ。それくらい衝撃を受けた。

「どうして? 見張りをつけていなかったんですか?」

「薬を隠し持っていたんだ。元からそのつもりだったのだろう。いつ捕まっても良いように覚悟をしていたのだ」

ランセルは顔には出していないけど、苦しんだんだろうな。

これまで居ないと思っていた兄弟が突然現れ、犯罪を犯し亡くなってしまったのだもの。

「ランセル殿下は大丈夫なんですか?」

「何がだ?」

心配して聞いたつもりだけど、じろりと睨まれてしまった。私には弱みを見せる気はないみたい。