騒動から数日が経った。

王宮の方では宰相が国王に危害を加え捕らえられたことが知れ渡り、大変な騒ぎになっていた。

今どうなっているのか知りたいけれど、私に報告する余裕はないようで放置されている。

そんな中、マリアさんが訪ねて来てくれた。

「王妃様、お身体が良くなったようで良かったです」

あの時、私の顔色は本当に酷かったらしく、皆が凄く心配してくれている。

「ありがとう、でも本当に何でもないの。私のことよりランセル殿下は大丈夫なの? とても忙しいようだけど」

マリアさんは、小さく頷いた。

「はい。宰相様が担っていた仕事もこなさなければならず疲弊しています。それにランセル様は繊細な方ですから心の方も心配です」

「……繊細?」

あの常に威張り散らしたランセルが?

唖然とする私に、マリアさんは困ったように言葉をつづけた。

「誤解されがちですがランセル様はとても優しい方です。傷つきやすくもあります。そんな自分を隠し強く見せる為に言葉が強くなってしまうこともありますが、後で反省して苦しんでいるときもあるんです。王妃様に対しても虚勢を張ってしまうと悩んでいました」

嘘でしょう?

にわかに信じがたいけど、マリアさんが言うからには本当なんだろうな。

あのランセルが……小説でのイメージと私への言動で最悪な奴かと思ってたけど実は良い所もあるのかな。苦手なのは変わらないけどもう少し先入観をなくして接してみようか……。

「王妃様、どうかランセル様の力になって下さい。私も出来る限りのことはするつもりですが、表立っては何の力もなく助けになれないのです」

「ええ。もちろん」

マリアさんは本当にランセルを想っているんだ。

大変だろうけどこんなに優しい恋人がいるなら、きっと彼は大丈夫。そう思った。