「……あなたはこれまで苦労したのだろう。だが国王に危害を加えた罪を見逃すわけにはいかない。裁きを受けて貰う」
ランセルがそう告げるとロウが動き、宰相の腕を後ろ手に拘束した。
宰相は少しも逆らわない。
「カレンベルク王国からバルテルを切り離そうとしたのは、宰相の意思ですね。なぜそんなことを?」
宰相を押さえたロウが問う。
「元々バルテルの地と住まう人々、受け継がれた力はインベルのものだ。正しい場所に帰す、それはインベル全ての人の願いなのだから、私が協力するのは当然だろう」
「バルテルが堕ちればカレンベルク王国も無事では済まない。どのように言い国王陛下を納得させたのかは知らないが、あなたは重罪人だ。たとえ王族の血を引いていたとしても許されない」
ロウの厳しい言葉に、宰相はふっと笑った。
「初めから許されようなど望んでいない。だが父は私の母を見殺しにし、私を捨てた報いを受けるべきだ。愚王として名を残して貰おうか」
「そうはいかない! 父上が目覚めれば、あなたの悪事は全て話す」
ランセルが堪り兼ねたような声を上げた。
けれど宰相はますます顔を歪め高笑いをした。