「宰相殿。あなたは国王陛下の血を引いているのではありませんか?」
「えっ!」
衝撃のあまり思わず声を上げてしまった。だけどそれは私だけではないようで、あのフランツ夫人ですら黙っていられなかった。
ランセルは唖然とした様子で口を開いた。
「ローヴァイン、何を言っている? 国王陛下の血を引くのは私だけだ」
「以前こちらで調査した結果もそうでした。しかしその後思いがけない情報を掴みました」
「その内容は?」
「過去に国王陛下の愛妾となった女性は、ベルヴァルト公爵夫人の叔母です」
うそ! たった一人の愛妾がエルマの関係者だったって言うの?
「宰相は、国王陛下と愛妾の間に生まれたのでしょう。しかし直ぐに城を出され、王都から離れた土地を領地に持つ伯爵家の養子となった……宰相殿、間違いないですね?」
唖然とするランセルの隣で、宰相は口元をゆがませた。
「君は凄いね、誰にも分からないよう隠して来たのに」
それは肯定の言葉も同然だった。
宰相は国王の子。ランセルの腹違いの兄だったなんて。
「だ、だがそれが真実ならば、なぜ国王陛下を狙った?」