「頼りになるよ、本当にロウと出会えて良かった」

しみじみ呟くと、ロウはなぜか戸惑ったように目を逸らした。

「な、何言ってるんだよ」

「何って、感謝しかないと思って……」

と、そのとき、応接間の扉の向こうが何やら騒がしくなった。

フランツ夫人かな? でもいつも落ち着き払った彼女がこんなにぎやかに登場するとは思えないけど……などと考えているとノックの音が響き同時に扉が開いた。

返事もしていないのに開いたことに驚いたけれど、やって来た人物の顔を確認してもっと衝撃を受けた。

「ランセル殿下?」

なんで彼がここに? 

眉をひそめているとロウが立ち上がる気配がした。

「王太子殿下、ご無沙汰しております」

ロウが礼儀正しく頭を下げる。

「久しぶりだな。最近顔を出さないからどうしたかと思っていた」

「申し訳ありません」

ランセルはロウのことは好ましいようで、いい人っぽく振舞っている。

やっぱり私だけが目の敵にされているみたい。

「あの、ランセル殿下はなぜこちらに?」

呼んでないんだけど? と言外に滲ませながら言う。

私もランセルにあれこれ言えない程度には、愛想がない。

それが伝わったのか、ランセルは憮然とした様子で答えた。

「ローヴァインと話がしたくて来た」

「そうですか。では私とロウの会話が終わったあとでお願いします」

「ロウ? 愛称で呼ぶなど随分と馴れ馴れしいんだな」

「従兄妹ですから。いけませんか?」

細かいことに突っ込んで来ないで、早く出ていってほしい。

「まあ、いい。それよりも話には私も同席する」

「はあ?」

「話はバルテルの件か、国王陛下の件だろう? 私も知る権利がある」

権利があるかもしれないけど、でもロウとふたりで話したかったのに。