公爵家の令嬢であるユリアーネは、今日デビューしたばかりだと言うのに大人気だった。

彼女を妻にと望む貴公子は多く、ダンスの誘いが後を絶たない。 

しかし、同じベルヴァルト公爵家の娘であるはずのアリーセには声がかからなかった。

まるで存在してないかのように、目を合わせない。
貴族たちはベルヴァルト公爵の顔色を窺い、疎まれている方の娘と関わるのを嫌がっているみたい。

凄くあからさま。

この状況は本で読んで知っていたから驚きはしないけど、目の当たりにすると呆れてしまう。

私ですら居心地の悪いこの状況は、繊細なアリーセにとって相当辛かっただろうな。

だから彼女は、中庭に続くテラスの方に逃げ出してしまうんだよね。

そこで予想もしていなかった事が起こるとも知らずに。

このあとアリーセは、カレンベルク王国王太子、ランセル・カレンベルクと出会う。

彼女にとって初恋となる出会い。

不遇だったアリーセに訪れたほんの少しの幸福。
心浮き立つ様子は読んでいてほっとしたものだった。