アリーセの物語に辺境伯は出て来ないから、馴染みが薄い相手なのだと思っていたけど。

「困っていたら助けになりたいとも言ってた。問題が片付いたらバルテルに来たらいい、伯父上も喜ぶ」

「うん、ありがとう。楽しみにしてる」

ロウは私をバルテルに連れて行くって約束を忘れていなかったんだ。

嬉しい。私がアリーセとは違う結末を無事迎えられたら、絶対にバルテルに行こう。

そこで家を借りて仕事をして、ガーランドさんに教わったバルテル料理を作って暮らすの。

想像するだけで楽しそう。現実の厳しさを僅かの間だけど忘れられた。

その後、ロウとざっくりだけど今後の打合せをした。

彼はしばらく王都に滞在すると言う。

ランセルとも今後打合せをする約束をしたので、故郷の辺境伯と連絡を取りながら、インベルの件に対応していくそうだ。

その間に私に協力して国王陛下を襲った真犯人探しもする。 

「リセは派手な行動は慎めよ」

「無茶はしないよ。でも私は別ルートで犯人探しをするから」

ただでさえ時間がないのに、部屋で大人しくなんてしてられない。

だけどロウは釘を刺して来た。

「駄目だ。嫌な予感がする。俺の勘は結構当たるから言うことを聞いてくれ」

ロウは真剣そのもので、それ以上反抗出来なくなる。

「分かった。無理はしない」

「よし。こちらで何か掴んだら直ぐに連絡する。フランツ夫人、リセをよろしく頼む」

「お任せください」

フランツ夫人の答えに満足したように微笑むと、ロウは応接間を後にした。