「バルテルへの回答は国王陛下と宰相が決断したそうだが、今後はランセル王太子自らが指示を出すことになる。まずは王家からインベルへ使者を送り真意を確かめることになった」
「そうなんだ。良かった。心配だったけどうまく解決しそうだね」
ロウは王家がバルテルを切り捨てると考えていたみたいだけど、杞憂だったんだ。
私までほっとする。バルテルを知っている訳じゃないけどロウの故郷でお米の美味しいかの地にとても親近感があるから。
「ただ、国王陛下と宰相がバルテルに関わらないと決断したのは確かだから油断は出来ない」
ロウは顔を曇らせる。
「……ねえ、国王陛下の件、ランセル殿下はなんて言ってたの?」
「病が悪化した為しばらく休養すると」
ランセルは夜会のあとのこと、話していないんだ。
私は声を潜めて、一連の出来事を説明した。
ときどき足りない部分があればフランツ夫人が補足してくれて、不足なくロウに伝えられたと思う。
彼は大層驚いた後、がっくりと項垂れた。
「ひと月って……どうするんだよ」
「短いのは分かってるけど、引き延ばすのは無理な雰囲気だったから」
ランセルは、今にも私を投獄しそうな剣幕だったし。
「だからって……手がかりはあるのか?」
「それはフランツ夫人といろいろ考えたんだけどね……」
ふたりでまとめた考えを伝える。
犯人は夜会の招待客以外。
ごく短い間の犯行で物的証拠も残していないことから、プロの犯罪者だろう。
国王に仕えていた従僕などはランセルが取り調べをしたけれど、怪しい点はない。