ベルヴァルト公爵家の人たちも来ているはずだけれど、一見して姿が見えなかった。
到着が遅れているのだろうか。
私は王族用の広間が見渡せる高段の席に座り、フランツ夫人がその背後に立つ。
貴族達の視線が集まっているのを感じたので、出来るだけ堂々とした態度に見えるよう振舞う。
しばらくするとランセルが来た。彼が王族専用の出入り口から姿を見せると、騒めきが起きる。多くの注目を集めながら、私と同位の位置にある椅子に腰を下ろす。
その様子を眺めていると、不意に彼がこちらを向き視線が重なった。
ぶすっとした顔。相変らず感じが悪い。
ランセルは興味がないとでもいうように私から視線を逸らすと、貴族達に夜会の始まりを宣言した。
同時に広間に降り、迷いない足取りで進んで行く。
その姿をなんとなく眺めていた私は、予想外の光景に目を見開いた。
彼がひとりの令嬢の前で立ち止まり、手を差し出したのだ。
声は聞こえないけれど、ダンスを申し込んでいるのは明らかだった。
周囲の貴族達も驚きの表情を浮かべている。
彼がダンスを申し込んだ令嬢はおろおろした様子を見せながらも、強引に手を引かれ広間の中央に連れ出される。絶妙のタイミングでワルツが始まった。
「彼女は?」
私はこっそりと背後に控えるフランツ夫人に問いかける。
「子爵令嬢でマリア様ですわ」
「子爵令嬢? でもこの夜会は伯爵以上が招待されているのでしょう?」
到着が遅れているのだろうか。
私は王族用の広間が見渡せる高段の席に座り、フランツ夫人がその背後に立つ。
貴族達の視線が集まっているのを感じたので、出来るだけ堂々とした態度に見えるよう振舞う。
しばらくするとランセルが来た。彼が王族専用の出入り口から姿を見せると、騒めきが起きる。多くの注目を集めながら、私と同位の位置にある椅子に腰を下ろす。
その様子を眺めていると、不意に彼がこちらを向き視線が重なった。
ぶすっとした顔。相変らず感じが悪い。
ランセルは興味がないとでもいうように私から視線を逸らすと、貴族達に夜会の始まりを宣言した。
同時に広間に降り、迷いない足取りで進んで行く。
その姿をなんとなく眺めていた私は、予想外の光景に目を見開いた。
彼がひとりの令嬢の前で立ち止まり、手を差し出したのだ。
声は聞こえないけれど、ダンスを申し込んでいるのは明らかだった。
周囲の貴族達も驚きの表情を浮かべている。
彼がダンスを申し込んだ令嬢はおろおろした様子を見せながらも、強引に手を引かれ広間の中央に連れ出される。絶妙のタイミングでワルツが始まった。
「彼女は?」
私はこっそりと背後に控えるフランツ夫人に問いかける。
「子爵令嬢でマリア様ですわ」
「子爵令嬢? でもこの夜会は伯爵以上が招待されているのでしょう?」