「娘さんの左眼ですが……失明しています。」
医師からそう告げられた。
そう、見えなかった。
左眼だけ真っ暗で、光さえも写してはいなかった。
原因は、車ではねられた衝撃で地面に頭を強く打ち、脳から伝達している左眼の神経を損傷してしまったらしい。
両親は唖然としていて、母は涙を流していた。
どうにかならないものかと両親は必死に医師にしがみついたが、医師は首を横に振った。
“生涯、左眼に光が入ることはない”
その運命に逆らうことはできなかった。
……私の左眼、もう見えないんだ。
“悲しい”、“怖い”、“つらい”……そんな感情は、何故か溢れてこなかった。
……いや、きっと、受け入れたくなかった。
いつかきっと見えるようになるはず……そう思いたかったんだ。