「うぅぐっひっ」



「泣き方もっと女っぽくなんねぇの」



「うっぐるさぃ…バカ」「バカって…なぁ」



仮にも好きな人の前で、とか
またこいつはすぐ調子乗る。








あーあ、
私完全に負けだな。



こんなバカでも好きになった私が悪い。

















「あ、この間借りた100円」






手のひらに手汗まみれの100円玉が見える




「やだ、汚い」「どこがだよ??」



ほら、ほらやるよ
若干濡れたそれは
少し前にこいつから借りたいとか言われたっけ?





「あれでも貸さなかったよね?確か」



確かあの時は私が
突拍子もなく金借りようとしたこいつに
イラッとして一銭も貸さなかった気がする





「いいよ、やる」


「は?」



「これは、俺とお前の記念日の証」





はぁ?
今度は腹から声が出た


「いいから黙って貰えよ恥ずかしいだろ」


「いや私の方が恥ずかしいわ、何でこれが証なのよ、こんな手汗まみれの」













「うるせぇ、俺の勇気の汗だ大事に握っとけ」



手に渡された物をじーっと見つめてたら
私も何だかすーっと納得してしまった。


「わかった。大事にするね?」



「お、おう」


ニヤけてるこいつウザいから一発蹴っとく



いってぇーな!彼氏だぞ?!
春陽の声はいささか機嫌が良いやつで







「あ、でさ。






お前からも聞きたいんだけど、」










「は?なにを?」





「え、いやぁそりゃ、さ」



「いや無理やだ絶対やだ」



「何でだよ、俺も言ったじゃん」



「この前電話で言ったからもういいでしょ」




「でも面と向かっては言われてねぇ」










春陽が次の言葉を待つ顔が

さっきの春陽の次の言葉を待つ私の顔と同じだとしたら

私たぶんさっき相当キモい顔してた。














この言葉は
また大事なときに取っておくね、































だから




「死んでも言わない!!!」




また背を向けて走り出す


背中に精一杯の言葉を託して。


























"私も春陽が好きだよ"








〜fin〜