「あのっ!」 「あのさ」 振り向いた聡介と咲智の声が被った。 聡介も呼ばれると思ってなくて、驚いたのか、目が点になっている。 「あ、与田さんからどうぞ……」 「いや、お前から」 お互いがお互いを譲り合って、痺れを切らした聡介はフウっと息をはいた。 「これからはさ、舞音なしで会いたいんだけど」 「えっ?」 それは本当に聡介の口から出た言葉なのか、疑り深くなった咲智は自然と瞬きが多くなった。