「ちょっと、主将ってば何言ってんの!!
この子、あの成宮の彼女だよ?」
「別に誰と付き合ってようが関係ないし?
俺、前から狙ってたんだよね〜」
「それ、本人の前で言っちゃうんだ!?」
うわ、最悪……
他の先輩らしき人もニヤニヤ笑いながら加わってきて、わたしが行く道を塞ぐ。
「あの、わたし急いでいて……っ!!」
「まあまあ、いいじゃん?
せっかくだし見て行ってよ?」
ダメだ、全然聞いてくれない。
むしろ距離が近いんですけど……
「ゆずきちゃんが来てくれたら俺、頑張れるんだけどなぁ…でさ、部活終わるまで待っててよ!
一緒に帰ろ?」
なんて言ってくる始末。
なんなのこの人!!?
人の話も聞けないの!?
誰があんたみたいなチャラ男なんかと一緒に帰るか、バーカ!!!
侑、助けて!!
目線だけ動かして侑を探すと、こちらに背を向けて話しているせいで、全然気づいてない。
ゆうぅぅぅーーーー!!!
さっきといい、今といい、どうして肝心なときに気づいてくれないの!!!?
「他のやつに協力してもらったんだよね!
せっかくゆずきちゃんが来たんだから、話すチャンスが欲しくて」
「ひっ……」
ニヤリと笑いながら、肩に手を置かれて、グッと距離が縮まった瞬間────
横からグイッと引かれたかと思うと、安心するシトラスの香りに包まれた。