練習している人の邪魔にならないように、ささっと移動する。
にしても、2階を見渡す限り、女子ばっかりだなぁ。
みんな、目をハートにしてバスケ部を見てるみたい。
「侑ーーーー!!!!」
持ち前の声の大きさで呼ぶと、こちらを振り返った途端、明らかに嫌そうな顔をしながらわたしの方へ駆け寄ってきた。
なんなのよ、その顔は?
わざわざ持ってきてあげたってのに。
渡すのを忘れてた、わたしが1番悪いんだけどさ?
「姉ちゃん」
目の前でムスッとした顔で立っているこの人物。
名前は片瀬 侑(ゆう)。
正真正銘、わたしの弟である。
成宮と同様、見た目はイケメン、性格訳あり。
「はい、タオル。
遅くなってごめん!!」
「ほんとだよ?
わざわざ行きたくない姉ちゃんのクラスまで行ったってのにいないんだから」
眉間にしわを寄せる、不機嫌な侑。
ほんっと、可愛くない弟だわ。