「そんなカッカしないでよ、せっかく可愛くしてるのに」
夏目くんは突然立ち止まってこっちを向いてそういうと、巻かれた私の毛束にそっと触れた。
「ちょっ、触らないでっ」
ほんと、こんな人が隣を歩いているなんて遊びに行く前から疲れてしまう。
最悪だよ。
せっかく夏休みの間は、夏目くんの監視から逃れられると思っていたのに。
なんでわざわざ迎えになんて。
夏目くんと私は中学が別だから校区はもちろん違う。
簡単に迎えに来れるような距離じゃないと思うんだけど。
そこまでして私のことを監視したいかね。
っていうかほんと誰から聞いたの。
まぁ、光莉や雪ちゃん辺りだろうと予想はついているけれど。
「別に私、誰かに言ったりとかしないから。見張ってなくても大丈夫だよ」
だからもう解放してよ。
「何それ。別に俺、郁田さんのこと見張ってるつもりで一緒にいるんじゃないよ。単純に、イタズラしたいだけ」
「もっと最悪」
そう言ってさらに睨めば、
「ハハッ。今日一日、楽しもうね」
夏目くんはそう言ってまた爽やかに笑った。