「ごめんなさいね、夏目くん。菜花、素直じゃないところがあるだけで根はいい子だから」
「ちょっと……」
余計なことベラベラ話さないでよね。
しかも夏目くんには特に!!
「よく知ってますよ、郁田さんが素直じゃないことは。でもそういうところも可愛らしいなって」
「まあっ!!」
こ、こいつ……。
そんなこと微塵も思ってないくせに。
というか、夏目くんの作戦に決まっているけれど。
ママまで味方につけようという魂胆だ。
よくもまぁ思ってもないことが口からポンポン出てくるよ。
「あーも、わかったから!ほら、夏目くん早く出て」
「えっ、ちょ、」
急いで靴を履いて、夏目くんの背中を無理やり押しながら玄関のドアを開けて。
「フフッ、いってらっしゃい、ふたりとも!楽しんでっ!」
嬉しそうに笑ったママに小さく「行ってきます」と低い声で言ってから、
バタンッ
なぜか夏目くんとふたりで動物園に向かうことになった。