「あの……お風呂、ありがとう、」

無事にお風呂に入ることができた。

2階に続く階段を上がって。

『SUZU』のプレートがかかる開けっ放しのドアを軽くノックしてから声をかけると、

「お、早かったね」

ベッドに座った夏目くんの目がこっちを見た。

「もっとゆっくり入ってもよかったのに。ってお湯はってなかったか。ごめんね。ちゃんと身体温められた?」

「うん。全然大丈夫。ほんと助かった」

そう言えば、夏目くんがフワッと笑う。
黙ってればただの爽やかイケメンなのに。

「良かった。洗濯終わるまでまだかかりそうだけど、郁田さん時間、大丈夫?」

「うん。あ、夏目くんは?お風呂入らなくて平気?」

「あぁ、俺は大丈夫。着替えたし髪もほら、乾かした」

「そっか」

乾かしたてホヤホヤの夏目くんの髪は、ふわふわしていて、ほんの少し幼く見える。

「郁田さんも早く乾かそう」

「えっ、」

『乾かそう』そのセリフにほんの少し違和感を感じて、

ドライヤーを自分の手から離さない彼を見てそれが確信へと変わってゆく。

「おいで」

そう言いながら、座ってるベッドをポンポンと叩く夏目くん。

つまり、夏目くんが私の髪の毛を乾かすと?