「郁田さん?早くお風呂入って温まらないと風邪引くよ」
「う、うん……」
夏目くんの家の門の前で突っ立ったままでいるとそう言われたので、慌てて後に続く。
「お、おじゃまします、」
家族の人、家にいないのかな。
夏目くんがドアを開けて玄関に入っても中から人の気配はしない。
っていうか、私、男の子の家に上がるなんて人生初じゃ。
人生初の異性の家がまさか夏目涼々の家になるなんて。
キスだってそう。
なんでこの人に、私の大事なものが次から次へと奪われないといけないんだ。
「そこまっすぐ行って奥の右側のドアが風呂場。今、着替えとってくるから」
「え、あ、うん、」
すぐに2階へ続く階段を上った夏目くんにとっさにそう返事をしてから、
ゆっくりと彼の家の浴室へと足を踏み入れる。
緊張するな……。人様の家のお風呂なんて。
色々と勝手が違うだろうし。
本当に夏目くんの家のこともよく知らない私が使っても大丈夫なんだろうか。