「最悪。びしょ濡れだし……」

「隣に俺がいるし?」

「ちゃんと自覚はあるんだ」

少し歩いて見つけた倉庫のような建物の軒下。

そこに雨宿りできそうな空間を見つけて郁田さんと並んで雨が止むのを待つ。

建物の壁に背中を預けるようにふたりで腰を下ろして。

チラッと横目で彼女を確認すれば、

前髪の毛先からシトシトと流れ落ちる雫が色っぽくて、

ドクンと胸が跳ねた。

郁田さんに触れた時の感触とか、熱とか、漏れた声とか、響く音とか、

そういうものが全部フラッシュバックして。

雨に濡れて冷えているはずなのに、明らかに自分の体温が上がっているのがわかる。

今すぐ触りたい。
目の前の彼女と、この雨の冷たさを忘れるぐらい、

一緒に熱くなれたらって。

「大丈夫かな、百合ちゃんと泉くん」

自分だってびしょ濡れなのに。

ていうか、まだ店の中にいたであろうふたりの方が最悪な思いをしないで済んでいるはずなのに。

俺みたいな計算はなしで、素で自分よりも他人を気遣う姿に、感心する。