恐怖と不安を胸に、私は施設を出た。

「学校…行かなきゃ殺されるもんね…。」

制服を整え、深く深呼吸をしていると後ろから声がした。

「あら…唯ちゃん、学校行くの?」

ニコニコと笑った若めの先生が近寄ってきた。知らない先生だった。

「うん、まぁ。ってか何で私の名前知ってるの?」

「あ~!ごめんね、施設長に聞いちゃって。ずぅーっと気になってたのよ。私は1週間前にここに来た向居由梨です。よろしくね?」

「ふぅ~ん。」

私は適当に返事して学校に早歩きで向かった。さっきの向居由梨って人。いやだ。すんごい馴れ馴れしいんだもん。あーいうのムカつく…。

「え?!ちょっ…唯?!」

「きゃぁ~ホントだ!!唯~★」

前からダッシュしてきた2人は、私の仲良しの美加と愛だった。

「美加、愛…久しぶりッ♪」

「唯ィ~もぉ!!大丈夫だった?」

「へ…?何が…?」

「何がって、入院してたんでしょ??どこの病院かわかんなかったから、お見舞い行けなくってゴメンね?」

「あ…」そうかぁ…そういって理由つけたんだ…、先生あんがと!!

「唯?」

「うん!!大丈夫だよ!!この通りピンピンだしっ☆」

「あは~心配かけてぇ~!!さ、学校いこ?」

「ごめんね?行こ!!!」

良かった、皆疑ってなかった。日向…ありがとう…。


その頃、日向は。

―――コンコン

ドアの向こうから叩く音がした。

「誰?」俺は声をかけた。

「私よ」

「………お前………」

ドアを開けると、向居由梨がいた。

「元気…だった?」

「何しに来てん?!子供捨てて、何のんきにして…」

「そのこと…謝りにきたの。ごめん…ごめんね?許して?お母さん、悪気はなかったの」

「お前なんか死んでも許さへん…悪気なくたって捨てたんには変わりないやろ?!」

「そうね…けど…しつこいのはお母さん嫌よ?」

「黙れや!!きもいねん!!自己中やねん!!死ね!!」

俺はそう言ってドアを閉めて、鍵をかけた。

「祐樹…許してぇ…」向居由梨はそのままドアにもたれかかった。