「ぁ、…私さぁ、5歳の時にね、ここの施設の門の前において行かれちゃったんだ。それでね、その時はまあ大体どういうことをされたかくらいわかってたんだけど、全然寂しくなくて泣けなくて。それで今思い返すと…こんな惨めな自分が悔しくて、寂しくて」

「だから…泣いてたんや?」

「そうだけど、あんた誰?」

「俺はここの部屋に移ることになった日向祐樹やねんけど、知らんやろ?」

「うん…私、ここの人あんまり知らないし」

「何で?」

「仲良くしたいと思わなかったから」

「何で?」

「…何で何でって、日向にはカンケーないでしょ?!」

ちょっとムカついちゃってキレちゃった。何か見ず知らずの人に全部を知られるのはあん

まりいい気がしなかったんだ。

「お前の考え、俺は嫌いやわ。」

そう言って日向は部屋から出て行った。

意味わかんない…。私は日向に対して少し怒りを覚えたが、何でかわからないけど

日向に気がかかってしまって、仕方なかった。

日向…アイツは何なんだろ。関西弁だったし、いつから施設にいたんだろ?

何歳なのかな?同い年くらいに見えたけど。何で施設にいるんだろ?っていうか不登校

なのかなぁ?っていうか…何で日向が私の部屋に移るんだろ?一応個室なのに。部屋

足りないくらい、ここって人いたっけ?聞きたいことは山ほどあるけど

まぁこれから毎日一緒の部屋にいるわけなんだから、焦らないでいとこう…。


そして、だいぶ外が暗くなってきたときに日向は部屋に戻ってきた。

「あっ…ねぇ日向」

「……何?」

「あのさぁ…何歳なの?」

「15」

「あぁ~そうなんだ!私と同い年じゃんっ」

無視された。何コイツ~~!!

「あとさぁ~いつから施設にいたの~?」

「知らん」

「えぇ~~何で?!」

「知らん」

「何で?」

「知らんっつってるやろ!!ほっといてや!カンケーないやん」

確かにそうだ。私がこの人の全てを知る権利はないのだから。