とは、言っても…。

部屋から出て、私は頭を抱え込んだ。

「やっぱ…わかんないしぃ…」

わかるはずがなかった。日向には色々な事教えてもらったし…私より年上な感じ?

「どこが子供なんだぁーーーッ?!」

考えても考えても思い浮かばない。アイツは随分大人なはず。どこから見ても…ね。

頭がこんがらがるくらい考え込んでいると、後ろから声がした。

「どう…したの?」

振り返ると、向居先生がいた。いや、何も教えちゃもらってない。だから、向居由梨だと呼ぶべきだ。

「いや、別に何も。考え事してたから」

「考え事??何々、そういう時は言わなきゃスッキリしないわよ?」

「向居さんに言う必要ないっしょ?関係ないじゃん」

「あ~ら?日向とちょっといただけで、物の言い方が似てきたようね?」

「意味分かんないし。」

「…さっきから聞いてれば、敬語は使わないし、さん付け呼ばわりするし、私のこと何だと思っているの?」

「別に何とも?ただの女の人じゃないの?向居由梨でしょ?それに何で知りあって2日で先生って言わなきゃいけないの?何も教わってないんですけど?だから敬語で話す必要もないってこと。わかった?」

「あんた…目上の人に何偉そうに…ッ!!」

向居由梨は手を大きく振りかざした。そして私の頬を叩いた。

――――――パァァーン…ッ――――――

叩かれた方が言うのも何だけど、すごく良い音が鳴った。

そして、向居由梨が自慢げに、

「ふん。所詮あんたは口だけね。」と言った。その声が聞こえたのか、施設長が部屋から飛び出してきた。

「ちょっと…?!唯ちゃん、大丈夫?!頬が真っ赤…」

施設長は私の見たことのないような鬼相をして振り向いた。

「向居先生ッ…あなた…出て行ってちょうだい。クビよ、クビ!!」

「…言われなくても出て行くわよ」

向居由梨は早足で施設を去っていった。

「唯ちゃん、大丈夫?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」

「ううん、いいのよ」

「あ、そうだ…。日向…、日向のドコが子供なのか、わかりませんでした。」

「そう…わからなかったかな…結構簡単だと思ったんだけどね」