「ねえ
久我先生の連絡先って
知ってるんでしょ?」

私はシャワーから出たばかりの
廉人さんに質問した

「知ってるよ」

「教えて」

「は?」

「教えるのが嫌なら
すぐ電話して
伝えたいことはあるの」

私は廉人さんのマンションに
住んでいるわけじゃないけど

週の半分以上は
廉人さんのマンションに
泊っていた

「ねえ
早く電話してよ」

「わかったよ」

廉人さんは
しぶしぶ
久我っちに電話してくれた

「もしもし
花音から話があるって」

廉人さんが
携帯を渡してくれた

「先生?
そこに果恋いる?」

『ううん
もう寝るって部屋に行ったよ』

「果恋ちゃんときちんと
話して欲しいから

言うんだからね

ちゃんと話をするって誓って」

『え?』

「いいから
誓うの」

なんだか果恋が一人増えたみたいだ、と
廉人さんが
ソファに座ってぼやいたのが聞こえた

『誓うよ』

「果恋ちゃん、婚姻届を出してないよ
だから先生と果恋ちゃんは
夫婦じゃない

果恋ちゃん
先生から別れようって言ったら
婚姻届は出してないって言おうっと思ってる
って話してた

でもそんな話し合い
よくないって思ったから

私は先生に言うんだからね

果恋ちゃんを悲しませたら
許さないから!」