寒くて体を丸めて座っていると

ばたばたと廊下を走ってくる音が聞こえた

理科室に入ってくると
準備室のドアが開いた

「花音!」

ホスト用のスーツを着ている廉人さんが
飛び込んできた

私に抱きつくと
怪我はないか
痛いところはないかと聞いてきた

「え? 仕事は?」

「花音が閉じ込められたのに
仕事なんてしてられるかよ」

廉人さんの後ろから
果恋ちゃんが顔を出してきた

「兄貴に連絡しちゃった」

「木下、大丈夫か!」

理科の教師 久我っちが濡れた髪のままの姿で
立っていた

よく見ると
果恋ちゃんの髪も濡れていた

あれ?

「どうして久我先生がいるんですか?」

「え?
果恋から…いや、海堂から連絡があってだな」

「隠さなくていいんじゃねえの?
夫婦だって言えよ

事の最中に
花音の連絡を受けて

果恋にお預けをくらっているってね」

廉人さんが笑いながら言った

「廉人さんとお知り合い?」

「同級生…んで、悪友だ」

久我っちと廉人さんが悪友?

「別に私は好きじゃないわ」

果恋がぷいっと横を向いた

あれ?
私、聞いちゃいけないような言葉を
聞いたような…

「夫婦って言った?
結婚しているの?」

「だから兄貴と別々に住んでるんだよ」

果恋が恥ずかしそうに言った

「果恋ちゃん
結婚してたの?」