一時間半の時がすぎると
廉人さんが
私のいる部屋に入ってきた

「待たせちゃったね」

「いいえ」

「続きしようか」

「へ?」

「だからキスだけじゃ
嫌だってことだよ」

廉人さんはそう言うと
私の隣に座って
押し倒した

「だってここ会社ですよ?」

「俺の会社だから」

「でも…」

「社長、伊集院様がお見えです」

秘書の女性がノックもせずに
勢いよくドアを開けた

秘書の鋭い視線で
私を睨んできた

私は肩を小さくした

私のせいじゃないけど
私のせい…なんでしょうね
きっと

「さっそくお出ましですか」

面倒くさそうに廉人さんは言った

私から離れると
スーツを整えた

「ネクタイが曲がっております」

「どうも」

秘書の女性がネクタイを触った

え?
曲がってなかったよ

もしかして
この人は
廉人さんを好きなのかもしれない

「花音、ちょっと待ってて」

「もしかして
父のことで…ですか?」

「まあ、ね
気にしなくていいから」

廉人は笑顔で言うと、
社長室に戻って行った

「貴方のせいで
社長がどれだけ大変か

おわかりいただけませんかね?

察しているなら
どうぞ、あちらのドアからお帰りください」

廉人さんがいなくなると
秘書の女性が
違うドアを指をさした

「でも待っていると約束したので」