ううん

打ち所が悪ければ、命を落としていたかもしれない。


「躾ける必要があるな。放っておけば。またどこかで暴れかねん」
「……そんな」
「見つけ次第、始末してもいいが」


セロが、パチンと指を鳴らすと会場に明かりが灯された。


舞台のセットは元通りになっている。

ひょっとしてあれもセロが直してくれた?


皆が、状況を呑み込めないなか

まもなく舞台が再開されるというアナウンスが流れた。


ふたたび、会場と舞台が暗転する。


「ありがと、セロ」
「なんのことだ」
「とぼけないでよ」


ぜんぶ、あなたのおかげでしょ。


「無駄な力を使ったせいで余計に腹が減ったな」


セロの腕が肩にまわってくる。


「ダメ、だってば」
「貴様のために使ってやったのだ。俺は誰がどうなろうと知ったことではないが」


……わかってる。

わたしが悲しむところ見たくなくて、助けてくれたんだよね。


舞台に立つ可愛く勇敢な魔法使いにスポットライトがあてられたとき、セロがわたしにそっと唇を重ねてくる。