――――ダンッ


板が倒れ、バキッという鈍い音が聞こえ、空気が凍りつく。


「誰か下敷きに……なったんじゃね?」
「救急車呼んだ方がいい?」


周囲がざわめき始める。


舞台が一時中断されるアナウンスが響き、会場に重い空気が流れた。


「……セロ」
「案ずるな。ケガ人はいない」
「え?」
「潰される前に移動させた」


 助けて、くれたの?


「しかし妙だな」
「妙……って?」
「故意に倒されたと考えて間違いない。加えて、会場の明かりがつかないのも。トラブルというよりは何者かの仕業だろう」
「それ……って。この舞台を邪魔した人がいるってこと?」
「ヒトではない」


 ドクン


「人間どもの楽しみを奪うことを"愉しみ"としているヤツがいる」
「……こんなのがたのしみだっていうの?」


 下敷きになれば、大怪我していたのに。