「あっ…」

すっかり柚月のことを忘れてほったらかしていた私は、柚月の腕をとり

「ごめん、紹介するの遅れ…」

私の言葉に被せるように口を開いた柚月が、柔らかな笑みを浮かべて二人に軽く会釈した。

「はじめまして。
朝陽の婚約者の新田です。フランス料理のオーナーシェフをしています。
宜しければ是非一度お食事にいらしてください」

と "婚約者" と名乗ってにっこり営業スマイルを浮かべた柚月の笑顔に、一瞬見惚れてぼぉっとなる。

改めて隣にたつ柚月を見上げると、整った顔をしている柚月は蓮司以上のイケメンだ。

会釈し返した蓮司と明莉ちゃんは、すぐに柚月にむかい口を開いた。

「はじめまして。朝陽…さんとはYAMASE で一緒に仕事をしておりました香田です。
こちらが妻の明莉と娘の愛音です。
総務の方で以前は明莉も一緒に仕事しておりました。

…婚約者さん、ですか…」

蓮司は、昔私が憧れていた懐かしい少年のような笑顔を浮かべ、柚月と私を見つめてとても嬉しそうに笑った。