「朝陽、今日はもう仕事上がっていいから着替えて柚月とデートしてこい」

「えっ…」

父の言葉に固まる私に、母も

「そうね、デートしてそのままお付き合いはじめちゃいなさい。

なんなら既成事実つくってもいいわよ?柚月くん。
帰宅は明日で全然かまわないから、ねぇ、お父さん」

「うっ…」

一瞬言葉に詰まった父が少し複雑な顔をして頷いた。

「さっ、朝陽、早く上に行って着替えてきちんと化粧してらっしゃい。
いつまでも、柚月くんが朝陽に言い寄ってくれてると思ったら大間違いよ?
他の人にとられる前に素直になりなさいよ」

母の言葉に胸の奥がざわついた。

チラリと横目で見た彼とすぐに目があい

「待ってるからゆっくり支度しておいで。
大丈夫、待つのにはなれてるよ。
こう見えて気は長いからさ、まぁ手は早いけど」

とくすくす笑い、お父さんは飲んでいたお茶にむせて咳き込み、立ち上がった新田さんは、洗い物を手伝いに母のいる台所に入っていった。