「まずはしっかり胃袋をつかまないとな」

いつものように店に訪れた新田さんが、手にした料理で胃袋をつかんだのは、私の両親の胃袋だった。

二人は目を丸くして、大絶賛して期待をこめた目で私を見つめたが

「私、新田さんとはなんでもないから。誤解しないで」

とそっぽをむくと、新田さんはそれでもどこか嬉しそうに笑いながら

「お父さん、お母さん、今アプローチ中なので気長に待っててください。
必ず俺が朝陽と結婚しますから」

「たからっ!!結婚なんてしないってば!!」

照れもせずにきっぱり両親にそう宣言した彼の言葉に、私は気がつけば真っ赤になりながら否定していた。

それでも、毎週定休日にはこうして料理を届け、私たちは四人で昼食をとるのがいつのまにか当たり前になっていた。